***恐いお話し***

 
みなさんは、恐いお話しがありますか。

わたしの住む町から隣の町に行く一本道には、どうしても超えなければならない、3つの難所があります。

ひとつは、身投げ池

ひとつは、帰らずの森

ひとつは、出口無トンネル

あなたなら、この道を通って隣の町に行けますか。

わたしは、隣町の知人に呼び出され、月の無い深夜の道を自転車で隣の町に向かいました。

そこには、人には語れない恐い体験が待ち構えていました。

自転車をこぎながら30分ほど行くと道の脇にある身投げ池にさしかかりました。

なにげなく池のほうを見ると暗がりにボンヤリ揺れる白いススキのようなものが見え隠れするのです。

暗闇に慣れた目で、よく見ると、それは池の水面から突き出た無数の人間の白い手でした。

おいで、おいで、をしているのです。

わたしは、恐くなって一目散で自転車をこぎ、疾風のようにその場を後にしました。

ふと、われにかえって、あたりを見ると、見上げるような雑木に囲まれた森の中にいました。

静まりかえった森の奥からは、何人もの、すすり泣く女の声、背筋が凍りつく思いでした。

恐いもの見たさから、近寄ってみると、そこには、髪を振り乱し横たわった、女の人たちの慣れの果ての姿だったのです。

放心状態になった体は、まるで泥沼の中を這うように自転車にすがりついたのです。

この森を早く超えなければと思いつつ、ペタルをこいても空回りするばかり。

どのくらい時間がたったのでしょう。

その前に、ふさがったのは幽閉の入り口に見えた小さなトンネル。

このトンネルを潜らなければ、隣の町に行けません。

足はガタガタと震え、前に行く気の無い自転車を必死な思いで進めトンネルの中ほどに行きました。

すると、突然トンネルの天井から青い顔の人間の首がたれさがったのです。

その時は失神状態でした。

恐さを振りきり、ペタルを踏む足も硬直しており思うように前に進めません。

全身の力をふるいたたせ、やっと出口に行くことが出来、トンネルを出た時には、既に気を失っていました。

わたしの住む町と、隣の町の間に夜な夜な現れる、不思議な謎の集団がありました。

ある人は、それは-------と言い。

ある人は、それは-------と言う。

それって、なんなんでしょうか。

不思議な謎の集団について、ご説明いたします。

その、謎の集団は3組ございまして、全て作者である、私が総指揮官になっておりました。

つまり、私の考えるままに出没するグループでした。

まず、身投げ池に出た多数の白い手は、あるスイミングスクールの夜の訓練中のものでした。

たまたま、未だ泳ぎが下手なものですから、溺れてしまい、白い手を上げて助けを求めていたところでした。
この指導をする先生も次々溺れる生徒に手を焼いていたと思われます。
人によってはねシンクロミントに挑戦していた者もあるようでした。

次に、帰らずの森に聞こえた女の泣き声は、ある女性コーラスグループの夜の発声練習でした。

このグループは、出来たばかりで、いくら練習しても声が揃わず、泣き声に聞こえてしまったのです。

このため、先生は注意するため全員を集合させましたがミーテングの途中に突風にあおられ生徒は髪が乱れたまま寝転んでしまいました。
下手は下手もの同志、女性だけの歌い慣れした人達の果てしない娯楽の一時だったので、それが慣れの果ての姿に見えたのでしょう。

次に出口無トンネルに出た、青い顔の首ですが、このトンネルは岩盤の質が軟弱なため、絶えず落石に悩まされており、その夜も朝までに復旧の作業が義務づけられて工事を急いでおりました。

安全上、青電気をつけて作業してましたが、ある作業員が作業を急ぐあまり上部の足場から、転落、幸い命綱をつけていましたので、ちゅうぶらりんになってしまったのです。
これが形の上で、青い顔の首に見えたのかも知れません。

隣の町に着くことが出来ない。

何故だろう。

確か、電話がかかって来たのが午後8時、あれから、づっと自転車に乗っているような感じがする。

車なら13分くらいのところ。

車で来たら、用をすまして家に帰って寝ていていいはずだ。

でも、現実に自転車で走りつづけている。

どうしたことだろう。

しかし、今、走ってるわけないんだ。

確か、1回目の時、気を失って倒れたままだった。

自転車で走ってるわけない。

ほっぺを自分で、つねってみよう。

いたたたた。やはり、痛いよ。

と言うことは、自転車で走ってることが現実なんだ。

しかし、なんだか寒気がする。

ほっぺが冷たい。

あれー。なんで冷たいんだろう。

もしかして、ほっぺに何かが触っている。

恐い。恐い。なんなんだ。この冷たさは。

筋書きのない実際にあったお話し。

つまり、歌のない歌謡曲みたいなもの。

筋書きが先行して、お話しがついて行く実話物語です。

今は、頭の中は、空っぽ。

と言うことは、脳みそは機能を麻痺して停止状態にあるわけですね。

なにか、顔に、ひんやかしたものに、なぜられたような気がしたのです。

顔中、鳥肌がたったのです。

ほかの人が見たら、にきび面に見えたでしょう。

気を失ったままでしたから、まだ、脳みその回転が起こる前の出来事だったんです。

それが、なんとまあ、雨の水が顔に溜まっていたのです。

顔を、ふり、その雨水をはたき、時計を見ると午前1時。

つまり、家を出てから5時間も、ふらふらしていたのです。

自転車で走るっていながら、気を失って、そこで寝ていて、よく怪我もしないものですね。

横たわった自転車を、立て直し暗闇の中で自転車を走らせました。

頭も、もうろうとしているので、恐さもどこかに行ってしまいました。

暫らく走らせると、ぼんやり明かりが見えてきました。

はーて、この明かりなんだろう。

向うに見える明かり。

ぼんやりしてたのが、はっきり見えてきた。

ネオンが赤、青、黄色で、きんきらきん。

どの花みても綺麗だな。

あれー、こんなとこに「スナック・ヒトダマ」だって。

たしか、昨日車で通ったときは、こんなのなかったけど。

まあ、いいや、そんなことはどうでも。

どうせ、知人のとこに行くのが、少し遅れてしまったんだから、どうせなら遅れついでってこともある。

しかし、金、少ししかないな。

木の葉っぱでも入れて、財布膨らましておいてやれ。

こ汚ねえ自転車、ここにおいて中に入ってみるか。

ワシ「こんばんわ、おばけえーーー」

狐子「あーら、ふーさん、いらっしゃい」

ワシつぶやき(おかしいな、おれの名前なんで知ってるんだろう。始めて来た店なのに)

狐子つぶやき(あの、ふところ具合なら、全部はがせば、お客は、一人で十分)

狸子ママ「まあまあ、ママです、ふうさんおいでやす」

ワシつぶやき(やっぱり、おかしい、ママ知らない顔だけど、でも知ってそうだから、そういうことにしておけ)

狐子「ふーさん、車、ベンツね、カギ預かっておくわ」

ワシつぶやき(ますます、おかしい、おれのボロ自転車ベンツに間違えるとは、よっぽど、目が悪いんだな)


続く